フローリストの真実
価格に関しても、つくれば売れた時代には、ほとんどの企業は「原価十利益=価格」というつくり手優先の考え方をしていたが、Tでは違う。
当時から「価格はお客様が決める。
利益はお客様の評価である」という考え方に立ち、お客様が納得する「適正原価」を追い求める姿勢が徹底していた。
T生産方式は、「適正原価」を厳しく追求するシステムであり、この点でも早くから「顧客満足度」を意識し、実践してきた。
こうした考え方は、メーカーだけではなく、サービス業などにも十分に通用する。
実際、O氏とI堂のI氏の交流はよく知られる話で、I氏はO氏からスーパー経営を改革するヒントをいくつも得ているという。
つくる側.売る側の発想ではなく、消費者の側に立って経営する大切さをT生産方式は教えているし、実現している。
なぜこれほどまでにT生産方式の導入や定着が難しいのか。
その前にT生産方式と一般的な生産方式には、どのような違いがあるのかを明確にしておこう。
この違いをきちんと理解しさえすれば、T生産方式が決して特殊なものではないとわかるはずだ。
T生産方式は、企業のなかからあらゆる種類のムダを徹底的に排除して、生産効率を上げていくために実によく考え抜かれた生産方式であり、むしろこれまで多くの企業が常識と考えていた一般的な生産方式こそが特殊なものだとわかるのではあるまいか。
T生産方式については、国内外から多くの関心が寄せられ、注目される一方で、あれはTという特殊な風土で成立したものだという見方もある。
実際に「かんばん方式」を採用しようとしても、本体の生産システムをきちんと構築しないでおいて、単に取引先に苛酷な要求をするだけでは「下請けいじめ」となってしまう。
T生産方式を本当の意味で定着させるのは、容易ではない。
トップはもちろん、すべての社員が「日々改善」という気持ちで臨む必要がある。
けれどもほとんどの企業が、ある程度効果が出たところで、改善をやめてしまう。
結局はもとに戻ってしまうというケースが少なくない。
某工場が生産性の向上という理由で本社から表彰された。
そのとき、皮肉にもその工場で生産された大量の製品が売れ残り、販売部門は大幅値引きによる投げ売りを余儀なくされていたという話がある。
いまや、低成長どころかマイナス成長さえもある時代に入り、なおかつ消費者の噌好が多様化してきた。
いくらモノをつくっても、思うようには売れない。
まして次々と新製品が投入され、技術が進歩する時代には、いったん売れ残った在庫の市場価格は実際にはゼロに等しい、というのが現実だ。
モノをつくっても、実際に売れなければ何にもならない。
必要以上の在庫があった場合、在庫を保管するための余計なコストがかかるだけだ。
いったんつくりすぎのムダを許すと、ムダがムダを生んでいく悪循環に陥ってしまう。
だからこそT生産方式では、「在庫は罪悪」と考える。
「必要数」も厳しく決まってくる。
生産と販売の連携がとれていないため、消費者のニーズを無視した製品であっても、とにかくフル操業で生産さえすれば、優秀な工場と認められていたからだ。
これでは販売部門はたまらない。
会社としても、利益が出るほうが不思議だ。
日本ではいまだにつくれば売れた時代の幻影を引きずっている人が多い。
たしかに戦後のモノがなかった時代や、高度成長期であれば、大量生産方式でもよかった。
大量に生産をして、在庫として抱えておいても、いずれは捌けた。
大きな値崩れもない。
インフレにより、今日よりも明日のほうが高く売れていても、「必要数」は、市場の動向、つまり売れ行きによって決まるだけに、企業や工場の都合で増減できるものではない。
「必要数」にしたがって、必要なモノを、必要なときにつくるのが、T生産方式の基本的な考え方だ。
機械をフルに動かして、モノをいっぱいつくるのが得だと考えるのではなく、売れるものだけをつくって、あとは機械を止めておく。
これが実は有効だと考える。
当然「つくっていくら」ではなく、「売っていくら」と考えるし、余分なものは一切つくらないのを基本としている。
いまだにモノを安くつくるためには中国や東南アジアなどに工場をもっていけばいい、と安易に考えている経営者が多い。
たしかに中国や東南アジアなどの人件費は、日本に比べてはるかに安い。
しかし、いずれ人件費が上がってきたらどうするつもりだろうか。
かつては日本の人件費も他の先進諸国に比べてかなり安かった時代がある。
しかもモノが圧倒的に不足していただけに、安い人件費を武器に、安くモノをつくれば飛ぶように売れるのは当然だった。
おかげで企業は成長を遂げた。
成長したから単純に「日本のモノづくりは優れているから」と錯覚した人が多い。
実は人件費が安かったことと、モノが不足していたことに助けられただけにすぎない。
さしたるノウハウがあったわけではない。
そのため日本の人件費が世界一になると、とにかくより安い人件費を求めて海外へ出ていく。
これにも自ずと限界がある。
そもそも生産にかかるコストを正確につかんでいる企業が少なすぎる。
収支決算にしても、せいぜい月単位、企業によっては半年とか一年単位でしか計算していない。
これでは本当に儲かっているのかどうか、仮に儲かったにしても、なぜ儲かったのかをつかむのは難しい。
まして今日のように市場が激しく動いているとき、何カ月も前のデータを見て、スピーディーな対応などできるはずもない。
T「何個つくった」を基本に考える工場が多い。
そうでなく、つくったものが売れてこそ、初めて工場は評価されるべきだ。
T生産方式の代名詞とも言える「かんばん方式」が下請けいじめになるかどうかは、何よりも前工程をどう捉えるかにかかっている。
ほとんどの企業の場合は、部品などを納品してくれる前工程を下請けと捉えている。
T生産方式には「下請け」という呼び方さえ存在しない。
「協力工場」という呼び方をする。
前工程は、自分たちができない領域をやってくれているから、「前工程は神様」と考え生産方式では、収支は毎日計算する。
それだけでなく、この原料はいくら、このスペースはいくらという細かい原価まですべて把握している。
だからこそ、生産工程に隠れているムダを一つひとつ省いて、コストを下げていくことができる。
安易に海外に出たり、リストラを行なう前に、生産部門の収支を、それもできればラインごとに計算して、ムダを排除していく。
これが先決だ。
だからこそ、前工程に「かんばん方式」を要求する場合は、自分の生産工程を厳格にしておくのが前提になる。
自工程がきちんとしないで、前工程に無理を要求するのは考え違いというものだ。
前工程を下請けと考えているから、「わがままに対応するのは当たり前」となってしまう。
自工程を厳しく管理するにはどうするか。
何よりも自工程の作業と品質は自分で検査をして、後工程高度成長期には、新しい製品をつくるたびに、工場を一つつくったり、新たに専用ラインを設けたりして、生産に臨んだものだ。
傍らから見ると、非常に華やかで、設備投資額何億円といった数字が新聞紙上を賑わしていた。
ところが、いったん製品が売れなくなると、その工場やラインは他に転用するのには決して不良品を流さない。
これが絶対条件だ。
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